第七十五回 やまだ診療所 山田正治先生
ナビゲーター:奈美師走の候、皆さんいかがお過ごしですか?
山田先生にインタビュー奈美: 素晴らしい景色ですね!先生がこちらに開業された経緯についてお話を聞かせてください。 先生:
奈美: ここからの景色をロゴに取り入れられたと思っていたのですが、ロゴのイラストが先に出来上がっていたなんて驚きました!先生は主にどのような患者さんを診てらっしゃるのですか? 先生: 内科と整形・リハビリと漢方がメインなので、開院する前は高齢者の患者さんが多いかなと想像していたのですが、若い方も多くて年齢層は幅広いですね。疾患としては、一般的な内科の病気や胃腸症状、膝や腰の痛み以外にも、眠れない、身体がだるいといった不定愁訴的な症状の方もいらっしゃいます。患者さんが女性中心なこともあって更年期障害のような症状の方も目立つのですが、症状を訴えても診断がつかなかったり、西洋薬を飲んでも改善しなかったりした方がお困りになって行き先を探して…といいますか、それで漢方を試してみようと思ってきてくださるのかなと思います。漢方診療に興味を持ってきてくださる方も予想以上に多くて、漢方中心の診療所のような処方の出し方になっています。 奈美: 辛い症状はあるのに診断がつかなかったり、薬を飲んでもなかなか改善しなかったりしたら、不安になってしまいますよね…そのような方々が漢方を求めて先生のところにいらっしゃるのですね!!先生が日々の診療で大切にされていることはありますか? 先生: 「診断をきっちりする」ということですね!検査もせずに症状への対症療法で処方してしまうと、症状は治まったけれども、根本的な原因や隠れている病気を見逃してしまう可能性があります。最初に見逃してしまうと後で拾い上げるチャンスを失うことにもなりかねないので、初診の際に、患者さんからしっかりとお話を聞いて、気にされている病気や疑われる病気について、採血や尿検査をはじめ、レントゲンや心電図、エコーなど検査機器も使って、除外診断も含めきちんと検査をしています。その上で、症状に応じた漢方の処方を行なうようにしています。 奈美: 症状さえ治まれば良いという訳ではなく、隠れている病気を見落とさないためにきちんと丁寧に検査をしていただけるというのは、安心ですね!漢方の優れている点や西洋薬との違いなどがあれば教えてください! 先生: 薬をあまり飲みたくないという患者さんでも「漢方だったら飲んでみたい」という方が多く、治療に入りやすい、飲んでもらいやすいということがあります。患者さんが抱く漢方のイメージとして、薬は薬でも「西洋薬」と「食事・サプリンメント」との間にポジショニングしている感じがします。身体に痛みがあって、消炎鎮痛剤などの西洋薬をずっと飲み続けている方が、もうこれ以上西洋薬を飲みたくない、漢方で治療してみたい、ということで来院されるケースもあります。 奈美: 漢方は天然の生薬ということで、抵抗なく服用される方も多いかもしれないですね。 先生: 医師側からしても、漢方という手段を持っていると、困っている患者さんに対して手を差し伸べやすいという利点があります。西洋薬は既にある程度ガイドラインも決まっていますし、診断がつかない場合やなかなか症状が治まらない場合の処方に限界があります。漢方の場合は、その漢方自体患者さんにとって処方されたことがない場合もありますし、そのときの体質や症状に応じて複数の処方を組み合わせたり、足してみたり変えてみたりしながら、積極的な治療をすることが出来ます。 奈美: 漢方によって、治療や処方の幅がぐんと広がるのですね!先生が漢方を診療に積極的に取り入れるようになったきっかけはありますか? 先生: 外科医として民間病院に勤務していたときに、褥瘡対策委員会という、褥瘡の治療や予防を行なうチームの委員長をしたことがあったのですが、外科だとどうしても西洋医療の合理的なやり方に偏ってしまい、それだけでは難しいと感じる場面がありました。やれることは全て試してみようと思って色々調べていた中で、漢方の身体を温める効果や、体力や気力を補う「補剤」という考え方、いわゆる計算ではいかない情緒的な効能効果など、これまで勉強してきたものとは異なる概念に触れて使い始めてみたのですが、そこで漢方の効果を感じたことがきっかけです。 奈美: 褥瘡は身体の外側から治療するイメージが強かったのですが、身体の内側から血行を促進したり、免疫や新陳代謝を高めたりするなどといった漢方の作用も、褥瘡治療に効果がありそうですね!先生が漢方の効果を実感した印象的な患者さんとのエピソードを教えてください。 先生: 入院中だった高齢で小柄な透析患者さんが、肩の痛みがひどいということで、「桂枝加苓朮附湯(ケイシカリョウジュツブトウ)」を処方したところ、痛みが減ったと喜んでいらっしゃいました。まだ少し痛みが残るということだったので、「ブシ末(ブシマツ)」という生薬を少しずつ足したところ、どんどん痛みが軽減していって、腕も上まで上がるようになったということがありました。透析患者さんなので、西洋薬の強めの鎮痛剤を飲み続けることは体に負担がかかるので、その点でも良かったと思っています。その後、無事退院なさったのですが、しばらくしてその患者さんが肩の激痛をうったえて救急車で運ばれてきまして…検査をしても異常はなかったのですが、紹介状の処方をみると、「ブシ末」が抜けていたので、もしやと思って処方に再び足してみたところ、肩の痛みがひいていった、というのが自分の中で劇的な経験でした。 奈美: 「ブシ末」の有無で、そんなにも患者さんの症状に差が出るというのは驚きですね! 先生: 処方に足して改善していった過程も、処方から抜けてしまっていたことによって救急車で運ばれるほど痛みが強くなってしまった様子もどちらもみていて、「ブシ末」の違いだけでここまで変わるなんて、改めて漢方のパワーを感じました。肩の痛みがひいた時の患者さんのニコニコ顔が印象的でした。漢方のパワーといえば、漢方は即効性がなく、西洋薬と比べて長く飲み続けるイメージがどうしてもあるのかなと思うのですが、入院患者さんで、喉が痛いと仰る方に「麻黄湯(マオウトウ)」を処方すると、驚く程早く症状が改善した事例がありました。西洋薬と同等、もしくはそれ以上の即効性を感じる場合があり、漢方への印象が変わりました。 奈美: わたしも風邪の引き始めや、治りかけているのに咳が続く時などは漢方を飲んで体調を整えていますが、驚くほどすぐにスッと症状が良くなった経験があります。 先生: 健康法は、「やまだ診療所」の3本柱の1つでもある「快眠・快食・快便」です! 先生: あっ!ストレス解消法は、笑うことですかね!昔からお笑いをみるのも、周りに笑いを提供するのも好きで、「笑いは健康を作る」と思っています。例えば、辛いことや何かトラブルが起きたときは、ネタをみつけた!と捉えるといいますか、ただ辛い、大変だ、ということで終わってしまったら勿体ないので、そのことを面白く人に話せる形にして、笑い飛ばすようにしています!それを人に話したりラジオで話したりして、面白いエピソードとして共有することで、ストレスもだいぶ解消されている気がします。 奈美: 先生とお話していると、私も自然と笑顔になります!!先生はラジオにも出演なさっているのですか? 先生: ゆめのたね放送局 関西チャンネルというインターネットラジオで、「細胞から輝け!!」という水曜日の朝番組のMCを務めています。漢方について話すことも多いですね。 奈美: 漢方についてもお話されるのですね!先生のラジオ番組、聴かせていただきます! 先生: 「総合診療」を心がけ、「あなたの専門医」として患者さんと向き合っていきたいと考えています。以前、救急科で勤務していた時に、あきらかに重篤な症状があるのにすぐに診断がつかなくて、各診療科の専門医でどの科で治療するのかずっと議論している場面を目にする機会があって、もしかすると患者さんは日常的にこういうことで困っているのではないか、と感じました。たくさんの症状や病気に悩まされている患者さんは、その症状や病気毎にそれぞれの病院や専門医にかかることになって、薬だけが増えてどんな治療をしたら良いのか迷子になってしまうことも多いのではないかと思います。場合によっては専門性の高いところに紹介もしますが、出来る限りなんでも診たいといいますか、困っている患者さんの症状や病気を丸ごと診たい、という気持ちがあります。そのためには、症状に応じて無限の組み合わせで調整しながら処方出来る漢方は大きな強みになります。漢方の効能効果には、婦人科や泌尿器科、整形外科の領域や、目のかすみ、などといった眼科領域まで含まれていますし、困っている患者さんに対してまだまだ手を伸ばせることがあると自負しています。特に薬の処方の部分で、1人の医師の頭の中で1人の患者さんに対して、この病気にはこの薬、この症状にはこの薬、というのを把握出来ると、優先順位を決めたり増減などの調整をきかせたりすることも出来ますし、この薬を大切にするために一旦この薬は止めてみましょう、という全体的な効果を考えた判断も出来ます。実際に開業してみて、ここでひとまとめにして先生から診て貰いたいという嬉しい声もちらほらいただいておりますので、これからも「あなたの専門医」を目指して幅広く取りこぼし無く診療していきたいです。 奈美: 先生が「あなたの専門医」という言葉にかけられている思いが伝わってきました!本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました! 症状に対する漢方の的確な処方は勿論、症状への対症療法だけではなく、西洋医学も組み合わせて隠れている病気を見逃さないようしっかり診断したい、様々な症状や病気に困っている患者さんを全体的に丸ごとしっかり診ていきたいという、「あなたの専門医」というお言葉がぴったりの先生でした! ■先生のラジオ番組のご紹介インターネットラジオ ゆめのたね放送局 関西チャンネル
■今回の取材先やまだ診療所
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