情緒不安定で気疲れや緊張感でぐったりします…

なかなか抜けない「夏の疲れ」に適した漢方薬

疲れやすい、食欲がない、働きたくない……暑さによる夏バテは、夏の中後期によくみられる症状です。なかなか抜けない夏の疲れを漢方薬で解消し、秋を元気に迎えましょう。

Q情緒不安定でイライラ感があり、気疲れや緊張感でぐったりします

仕事をテキパキこなす先輩は、私たちの憧れの的。ですが、聞けば最近は情緒不安定でイライラ感があり、気疲れや緊張感でぐったりするそう。同僚も常に、体が重だるいとか。何か良いお薬はありますか?

A“ストレス”や“水害”も疲れの原因に

まず先輩の方の疲れは“ストレス”によるもの。ストレスはエネルギー(気)の働きを妨害し、疲れの原因を作ります。人付き合いがよくて、仕事もそつなくこなし、傍からはストレスなどないように見えても、感情を抑制し、緊張の糸が切れるとぐったりと疲れてしまう…そんな人は意外と多いものです。こうしたストレスによる気疲れには 小柴胡湯 が適しています。この漢方薬は自律神経を調整する 柴胡(サイコ) という生薬を中心に、緊張感を和らげ疲労感を解消します。

また、同僚の方は“水害”タイプ、水分の摂りすぎによる疲れです。水分を摂りすぎると、余分な水のために体の中は水害のような状態になります。
そうなるとエネルギーは水分に邪魔されて流れにくくなり、その結果疲労が起こります。こうした水害タイプは、体が一日中すっきりしない「重だるい疲れ」になります。治療には カッ香正気散(かっこうしょうきさん) を用います。生薬の カッ香(カッコウ) には水分代謝を調整する作用があり、水分の摂りすぎによる疲れを改善します。この薬は疲れだけでなく、寝冷えなどが原因で起こる胃腸型の風邪(夏風邪)にも最適です。

漢方メモ

「元気」を作る漢方薬

朝から元気がない、食欲が湧かない、通勤電車ではいつも居眠り…。こうした慢性的な疲労を訴える人は少なくありません。“やる気”“元気”“陽気”など気にまつわる言葉はたくさんあり、普段何気なく使っていますが、実は疲れはこうした「気」と密接に関係しています。気は目には見えない精微物質で、私たちの体を支えるエネルギー物質としての役割を担っていると考えられています。

気が不足するとエネルギー不足の状態となって、全身にさまざまな疲労症状が起こります。また気が充分にあっても、ストレスや水分の過剰摂取などの原因で停滞し、体の中を巡らなくなると同じような元気不足の症状が現れます。漢方薬はこうした慢性化した疲れに適しています。治療原則は、気が不足している時は補い、気が体内で停滞している時は流れを円滑にする、という方法で「元気」を作ります。